【この想いを伝えたい】

 医師から胃瘻をしない。経管栄養をしない。言語聴覚士から口から食べる事を禁止され。看護師から点滴を打つところが見当たらない。と告げられたらご本人・ご家族は、どのような心境か想像できますか。ご本人は、肺炎治療中からずっと口から食べたいと懇願していました。 
 先がないのなら願いを叶えさせたいと決心。ホームページを頼りに完全側臥位を行い、恐る恐るゼリーを口へ‥‥‥‥完食。信じられない奇跡が!(当然?) 1週間でお粥が食べられるまでになった方がおられます。この方の事例を、紹介いたします。

 5月中旬に埼玉県所沢市在住のSさんからお電話をいただきました。弊社のホームページを見て完全側臥位なら口から食べられるのでしょうかという問い合わせでした。
 昨年9月に宮城県で暮らされていたお母様が大腿骨折し、車椅子生活になり、所沢で一緒に暮らすようになった。
 11月から老健施設に入所していたが、誤嚥性肺炎を起こし、4月26日に入院。肺炎治療が終了し医師からは、口から食べる訓練をしようと言われ、お母様共ども喜んだそうです。絶食期間中から食べたい食べたいと言い続けていたので、やっと味わえると。ところが、言語聴覚士の検査により口から食べると誤嚥性肺炎になるので、口から食べる事を禁止されました。また、87歳と高齢のため胃瘻はやめましょうと医師に言われたそうです。退院先は、もといた老健施設に戻ることを希望されていました。しかし入所条件に胃瘻はだめ、経管栄養もダメという条件があったそうで、点滴のみで栄養を取る方針が決まったそうです。

 医師からは胃瘻はダメ。経管栄養はやめましょう。言語聴覚士からは検査の結果、口から食べてはいけない。このように言われ途方に暮れていたそうです。希望をなくし、悲壮感にさいなまれていた。そんな時に弊社のホームページを見つけ、お電話してくださりました。話をしているうちに完全側臥位でリハビリを受けたいということになりました。所沢近くでどこの病院が行っているかわからなかったので、福村先生に相談いたしました。福村先生も月一回診察に行っておられる病院を紹介してくださりました。そのことをSさんにお伝えしました。早速問い合わせをするとのこと。ただ老健施設に戻れるかどうかというところもあるので考えますとのことでした。

 約1ヵ月後の6月9日にSさんからお電話がありました。
 福村先生から紹介して頂いた病院に電話をしましたが、入院はできるが遠方のため訪問診療はできないと言われました。老健施設には戻れず自宅で在宅療養することになり、病院から訪問看護を受けることになったそうです。口からは楽しみ程度に、栄養は点滴のみ、日に日に痩せていくのが見えて辛かったそうです。その間ずっとお母さんは食べたい食べたい口から食べたいと訴え続けたそうです。

退院してから、3日後には点滴を刺す場所がないと看護師さんに言われ、お母様の願いを叶えさせようと決意されました。
 弊社のホームページを見ながら横向きになって、ゼリーをおそるおそる食べさせ、全て完食。むせることなく、心配した誤嚥もしなかった。そして、少しずつ量を増やし1週間後にはお粥を食べられるまでになった。全てお母様を想う娘の気持ちが食べさせたのです。そして、そのことを私にお電話で伝えてくださりました。この感動を伝えたい。医師・看護師・言語聴覚士に見放されたSさん。従来の嚥下姿勢では、口から食べられない方も完全側臥位では可能性があります。このことを伝えたい。Sさんが受けた虚しさ、悔しさ、悲壮感、絶望感。お母様の切な願い、気持ち、いろんなことが葛藤していたと思うと自然と涙がこぼれました。

 日本全国には、この気持ちを抱えている多くの人がいます。医療従事者は、勇気を持って完全側臥位を試してほしい。ご本人、ご家族は口から食べる希望を捨てないでほしい。このことを伝えたい。
 摂食嚥下に関わっている方が、完全側臥位法を知らないのは人災です。