誤嚥しないで、安全に口から食べられる、もっとも簡単で楽な完全側臥位法

 福村直毅医師は、2007年に鶴岡協立リハビリテーション病院在職中に完全側臥位法を発見し、治療に導入し鶴岡市では肺炎死亡率が低下した。2015年に健和会病院に移り、長野県飯田地区を中心に最新の嚥下治療が全国に広がっています。

 しかし、従来の考え方に横になって食べる嚥下治療はないこと。横になると誤嚥するという根拠のない考え、行儀が悪いという習慣などから完全側臥位法の導入に抵抗感を示す医療従事者が多くいるのも事実です。不公平な嚥下治療格差が無くなることを願い完全側臥位法の正しい情報を発信します。

完全側臥位法の定義

完全側臥位では声門より下の咽頭側壁に食塊がたまり誤嚥しない。
完全側臥位では声門より下の咽頭側壁に食塊がたまる。

完全側臥位法(complete lateral position)を定義すると「重力の作用で中~下咽頭の側壁に食塊が貯留しやすくなるように体幹側面を下にした姿勢で経口摂取をする方法」


完全側臥位は、臨床的に多数見られる偽性球麻痺タイプの患者に有効です。

嚥下運動以外の時間に、口腔~咽頭~食道へと食材がどこをどう流れ、安静時に食物がどこにどう貯留するのか、そしてその貯留が誤嚥につながらないのかを考えることが重要です。

空気と食材の流れ

空気は、鼻腔、口腔と気管の間では抵抗が低い咽頭正中を通って流れる。気管と食道は隣り合わせにある。通常、食道は閉塞状態で食材が流れ入ることはない。嚥下反射があって初めて、食道入口部が開き食材が食道へ入る。つまり、嚥下反射が起こるまで、空気は自然と気管に入る構造になっている。気管は管状で気管の前にある喉頭は、喉頭蓋、披裂喉頭蓋襞(ひれつこうとうがいひだ)で食材侵入を防いでいる。さらに声門が閉じて食材の侵入を防ぐ構造をしている。

咽頭では空気と食事が交差して流れる
咽頭では空気と食事が交差して流れる
食事は喉頭蓋に当たり左右に分かれる
食事は喉頭蓋に当たり左右に分かれる

食物は重力の作用により移動する。

一般的な座位では、咽頭・喉頭が立ち上がり食材は梨状窩に貯まる。梨状窩の容量を超えると披裂喉頭蓋襞の披裂間切痕から喉頭侵入し誤嚥に至る。

食事は座位では声門より上の梨状窩に溜まる
座位では声門より上の梨状窩に溜まる

完全側臥位では食物は中咽頭レベルで咽頭側壁に沿って流れる。そして中咽頭~下咽頭にかけて貯留する。中~下咽頭の容量を超えると披裂喉頭蓋ひだを超えて喉頭侵入するが重力方向が側方に働くため、容量が増え声門を越えるまでは誤嚥しない。

(詳しくは、「役立つ嚥下治療」エッセンスノートを参照)

食事は声門より下の咽頭側壁にから梨状窩に溜まり誤嚥しない
声門より下の咽頭側壁にから梨状窩に溜まる


喉の構造が理解できれば、安全な嚥下ができる

透明咽頭モデル「トラピス」は、嚥下治療を考えるために作られました。

トラピスとは・・・トラピス=TRAPISTransparent Pharynx for invisible side の頭文字)であり、「見られない側の為の透明な咽頭」の意で、これまで見る事の出来なかった咽頭の仕組みを透明なモデルで再現する事により、咽頭の仕組みをより深く理解し、問題解決に繋げていってもらいたいという思いが込められている名称となっています。

 

嚥下前に食材が溜まる場所は、喉頭蓋谷と梨状窩です。
喉頭蓋谷と梨状窩に溜まる

嚥下前に食材が溜まる場所は、喉頭蓋谷と梨状窩です。

30度仰臥位では、梨状窩に3ccほどしか飲食物は溜まらない。
梨状窩に3ccほどしか溜まらない

30度仰臥位では、梨状窩に3ccほど、飲食物が貯まる。

完全側臥位では、咽頭側壁から梨状窩にかて20㏄ほど貯められる。

完全側臥位では、咽頭側壁から梨状窩にかて20㏄ほど貯められる。



トラピス

3月発売予定。プロトタイプによる説明を7回に分けて福村直毅医師にしていただきます。

  1. 透明咽頭モデル作製の目的  2/2
  2. 透明咽頭モデル各部位の名称 
  3. 前かがみ座位での誤嚥の仕組み
  4. 背中をもたれかかった時の誤嚥の仕組み
  5. 仰臥位30度での誤嚥の仕組み
  6. 誤嚥しない完全側臥位の仕組み
  7. 透明咽頭モデル説明の終わりに

 

 

透明咽頭モデル作製の目的

仰臥位30度での誤嚥の仕組み

誤嚥しない完全側臥位の仕組み


完全側臥位法の代表的な嚥下機能代償能力

  1. 安静位の咽頭貯留量が多いことは嚥下反射惹起遅延や咽頭収縮不全を代償する。
  2. 咽頭流路を側方に固定できることは食材が正中から喉頭に流れ込むことを防ぐ。
  3. 食材流路が喉頭よりも低い位置になることは喉頭侵入物の喉頭外排出を促進する。
  4. 声門閉鎖不全時食材が誤嚥されていく方向に対して逆向きに重力加速度が働くため誤嚥リスクを軽減できる。
  5. 送り込み障害が併存する場合は重力加速度を口腔から咽頭に向けて働かせると有利になることが多く、完全側臥位では頚部回旋を併用する。頚部回旋は回旋方向に喉頭を移動させるため、下になった咽頭側壁から喉頭までの距離が長くなり貯留できる量が増え、食道入口部開大も改善する。
  6. 鼻咽腔逆流が見られる場合は頭側をあげる。
  7. 下咽頭貯留量が不足している場合は頭側を下げる。

完全側臥位のポイント

完全側臥位は、ベッド面に対し、両肩を結んだ線と骨盤が垂直になる姿勢です。
両肩と骨盤は垂直

完全側臥位は、ベッド面に対し、両肩を結んだ線と骨盤が垂直になる姿勢です。

 姿勢保持ポイント

・咽頭側面が真下に保持できるようにすること。

・背中側へは崩れさせない。

・肩のラインと骨盤が垂直に保てるように整える。

・枕は顔を上向きにした状態を保てるようにする。

        エッセンスノートP137参照


完全側臥位の作り方

社会医療法人健和会 健和会病院 摂食・嚥下障害看護認定看護師 福村弘子看護師の協力のもと、一般的な完全側臥位姿勢の調整手順を説明します。

~横になり体全体で「く」の字を描くような姿勢~

腕の位置を整える。


足底に手を添え、膝を立てる。

膝を支えながら骨盤を立てる。

骨盤の下に手を入れて抱え、持ち上げずに引き寄せる。

枕ごと頭部を前に持っていき背中を丸める。

頭が水平になるように枕の高さを調整する。

上の足を前に出す。

足の間にクッション、手にクッションを抱える。

完全側臥位で自力摂取される場合のポイント

両肩と骨盤を垂直に立てる。

食事は斜め45度下に置く。スプーンは食べやすい用に曲げる。

 

咽頭に溜まった食物を水またはとろみ水に置き換える。フィニッシュ嚥下。

 

完全側臥位で食事介助をする場合のポイント

はじめに水分で口の中を湿らす。

スプーンを回転させて、口の中にいれる。


食事の最後はフィニッシュ嚥下。


完全側臥位の姿勢調整動画

完全側臥位で食事をするときの注意点を4つのビデオで紹介します。

  1. 完全側臥位の姿勢調整方法 完全側臥位支援クッション(ピタットくん90)の調整
  2. 頸部回旋の調整方法 ふたこぶラックンの調整方法
  3. 自分で食べる(自力摂取)ときの注意点
  4. 食事介助する時の注意点

 

1.完全側臥位の姿勢調整方法 完全側臥位支援クッション(ピタットくん90)の調整

 3分36秒

ベッド上で、仰向けから完全側臥位にするときの注意点を説明しています。 

 

  • 膝の立て方
  • 腰の引き方
  • 腕の位置
  • 足の位置 など患者さんと介助者の負担が少なくなる方法を丁寧に説明しています。
  • 完全側臥位クッション(ピタットくん90)の調整方法を説明しています。

2.頸部回旋の調整方法 ふたこぶラックンの調整方法

2分45秒

 

頸部回旋で飲み込める症状

  • 口腔期からの送りこみが不十分な方
  • 咽頭残留が多い方
  • 食道入口部の開きが悪い方
  • 頸部回旋を安定させるふたこぶラックンの使用説明

3.自分で食べる(自力摂取)ときの注意点  2分55秒

片麻痺でも動く腕を上にすれば、自分で食事が取れる方法です。健側側(麻痺のない方)を下にし

食物がのどを通過するのを感じながら食べる健側傾斜姿勢の場合、自分では食べられません。

最後に、咽頭側壁に溜まっている食材を水またはとろみ水に置き換えるフィニッシュ嚥下をして下さい。


4.食事介助する時の注意点

 

  3分6秒

完全側臥位で、食事介助をするとき介助者が患者さんに対して45度の位置に座ると、口の中が見やすく食べ

させやすくなります。

 

最後に、咽頭側壁に溜まっている食材を水またはとろみ水に置き換えるフィニッシュ嚥下をして下さい。



まず横になってみませんか

もうお分かりですよね。

横になって食べてもむせない。誤嚥しないことを。

(症状・病状により100%全員が誤嚥しないわけではありません。)

まず、介助者やご家族が横になって水またはとろみ水を飲み込んでください。

飲み込めましたか。むせましたか。

まず横になって食べてみてください。

 ご家族に、患者さんに食べさせてください。

 

 

 

 

完全側臥位支援商品

弊社は、福村夫妻の理念に共感し、口から食べられる人生を全うできる完全側臥位法を多くの方、病院、施設で使っていただけるように情報発信と福村夫妻の指導のもと開発した商品を紹介しています。病院や施設で、完全側臥位法を導入するとき勉強会や研修などに使用できるDVDや共通道具の準備を進めています。

 

 

医療・看護・介護で役だつ嚥下治療

エッセンスノート

編著者 福村直毅

飲み込みを理論化し、症状から、安全な飲み込み方を推測し分かりやすい写真とイラストで実践できる嚥下治療ガイドブック。

 税込み 3,564円

 

完全側臥位法の導入に役立つ支援DVD

 完全側臥位の姿勢。食事の注意点。ふたこぶラックン・ピタットくん90の調整方法を収録。

完全側臥位法支援DVD収録メニュー

1.完全側臥位調整方法 3分35秒

      完全側臥位調整方法

     ピタットくん90の調整方法

2.食事介助の方法 3分35秒

3.頸部回旋のポイント 2分45秒

ふたこぶラックンの調整方法

4.自力摂取の方法 2分54秒

 

透明咽頭モデルによる誤嚥の仕組み解説 6分04秒

1.座位での誤嚥の仕組み 1分02秒

2.背中にもたれかかったときの誤嚥の仕組み 1分39秒 

3.仰臥位30度での誤嚥の仕組み 1分39秒

4.完全側臥位での誤嚥の仕組み 1分44秒 

 

 税込み 2,160円

完全側臥位支援クッション(ピタットくん90)

背中への倒れ込みをビーズクッションで支える。身体の下に敷く自重シートによりクッションのずれを防止。 

完全側臥位を背中から支えるクッション。唾液誤嚥予防・回復体位にも使えます。

サイズ:クッション部280×700×150mm 自重シート部200×280mm

 税込み 8,640円

単品ご注文の際 調整DVD付属

 

ふたこぶラックン

三角形と長方形のクッションにタオルを取り付け頭を乗せるとしっくりと頭頸部を支えます。頭頸部を安定させ、頸部回旋、頭部の高さ調整が行える。食事中の完全側臥位を簡単に保持できる枕。

税込み 12,000円

 単品ご注文の際 調整DVD付属

 

ご注文はこちらをクリック

購入しやすいセット価格を用意しています。


完全側臥位法の情報を発信するのに多大な協力をいただいた

社会医療法人健和会 健和会病院 総合リハビリテーションセンター長 福村直毅医師

社会医療法人健和会 健和会病院 摂食・嚥下障害看護認定看護師 福村弘子看護師  

に感謝いたします。    株式会社甲南医療器研究所 代表取締役 前田悟


透明喉モデル(3月発売予定)
透明喉モデル(3月発売予定)
  • 2018(平成30)年2月22日(木)〜23日(金)にパシフィコ横浜で開催される 第23回日本静脈経腸栄養学会学術集会で完全側臥位法導入セットを展示します。     展示ブースB-39
  • 2018(平成30)年2月25日(日) 大阪府言語聴覚士会学術集会で完全側臥位法導入セットを展示します。 
  • 2018(平成30)年3月4日(日) 三重県言語聴覚士会学術集会で完全側臥位法導入セットを展示します。
  • 2018(平成30)年6月22日(金)〜23日(土) 第19回日本言語聴覚士学会で完全側臥位法導入セットを展示します。

完全側臥位法導入セットは、透明喉モデル(3月発売予定)、「役立つ嚥下治療」エッセンスノート、ふたこぶラックン、ピタットくん90です。

完全側臥位のカタログはこちらをクリック