「フィニッシュ嚥下について」

完全側臥位法を実施するにあたって、注意する点と誤解されている点にフィニッシュ嚥下があります。
完全側臥位法を導入する時の質問で
「フィニッシュ嚥下で水分を飲み込むときに誤嚥しないか不安です。」と質問されます。
フィニッシュ嚥下は、心配されているとおり残留した水分は誤嚥される可能性があります。
ではなぜわざわざフィニッシュ嚥下をするのか?

はじめに知るべきは、嚥下反射は再現性が高く、咽頭収縮が弱いところは常に何かが残りうるということです。
ヒトは常に唾液や鼻汁を咽頭に流し込んでいます。つまり収縮不良部分に唾液や鼻汁が常に残留していることに対してどうするか、ということです。
場合分けをしましょう。

① 何も食べていない場合・・・鼻汁、唾液による汚染
② 食べた場合・・・食材
③ フィニッシュ嚥下した場合・・・とろみ水

なにも残留していない、という選択肢がありません。この①から③で何を選びますか、という問いになるのです。
完全側臥位法以外でも、食材の残留があり取り除くためにフィニッシュ嚥下を行っています。
一 般に、咽頭残留除去として行われている方法にゼラチンスライス摂取法があります。ゼラチンスライスの摂取は、嚥下反射惹起が遅れる方では誤嚥リスクが高く なりますのでご注意ください。また食道入口部開大不全が強い方の場合はつよいとろみ水で残留が増加しますので、症状に合わせてとろみ水、水、ゼラチンを使 い分ける必要があります。症例数が多いのは嚥下反射惹起遅延を主体とした偽性球麻痺ですので、特殊な環境、例えば頭頸部外科病棟などを除けばとろみ水を使 うことが多くなるでしょう。
                                                                                                                                                              福村直毅