「肺炎にかかって胃瘻を勧められたとき」

日本人は10人に一人が肺炎で亡くなっています。そして肺炎の最大の原因が嚥下障害、飲み込みの失敗です。肺に食事などを吸い込んでしまうのです。

食事がとれなくなると回復はおろか生きていくことすらできません。点滴で栄養を摂る方法もありますが、いろいろな危険があり一番に勧められるものではありません。そこで鼻から管を入れて胃に栄養を流し込む方法を選ばれることがおおいのですが、それも抜けてしまったり、知らないうちに管がたわんでしまい胃に入れているはずの栄養が肺にはいってしまうこともあります。口から安全に食べられなくなった方にしっかり栄養を摂っていただくには胃瘻が最良です。では「安全に食べられなくなった」ことはどうしたら証明できるのでしょうか。そしていったん胃瘻を作った後の安全に食べるための治療はどうしたらよいのでしょうか。

肺炎になったということは、それまでの食べ方では危ない可能性が高いと考えられます。食事の内容、食べる環境、食べ方、食べた後の口腔清掃などの何かを変える必要があります。なにをどう変えればよいのでしょう。組み合わせは無数にあり、そのうちどの組み合わせが最善かは嚥下機能と文化、生活習慣、環境、介入者の特徴などを総合的に分析して見つけていきます。このとき役に立つのが前回お話しした専門的な検査です。そして総合判断にもっとも慣れているのがリハビリテーション科医師と考えられます。

肺炎を治療してくださる医師と、嚥下治療に精通した医師、歯科医師が協力して「安全に食べる」方法を探し出します。そのなかで今すぐには安全な食べ方がない、と判断されると胃瘻をお勧めすることになります。このとき、食べられないと判断されていても完全側臥位法なら安全にたべられるという方がいらっしゃいます。そして肺炎の再発率は従来の手技よりも低いことも分かっています。

 

肺炎になった後の食事は決め方がとても難しいものです。慌てずしっかりと診察してもらいましょう。

                                                                             福村直毅